【祭みたまま】つつこ引き祭り(2)
★ 情報提供者:はっちゃん
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【つつこ引き】
手拍子のあと引き子は一斉に、「つつこ」に殺到して、引き始めます。一応自分の組の方向へ、引いていくことにはなっているのですが、なんせ「つつこ」は持ち手もなんにも無い俵のおばけですし、昨晩の熱湯が、水となってたっぷりと含まれていて重くて持ちにくいことはなはだしいです。ただずるずる引きずるか、またはちょっともちあげて落とすような状態です。
指揮者が大声で指揮をします。「赤!持ち上げろ!」「白!つけつけ!」「黄!かつげ!」 「赤!持ち上げろ!」で赤鉢巻き組が前へ出てつつこを掴みつつこを持ち上げ
るようにして、自分の陣地の決勝点の方向へ引っぱります。
「白!つけつけ!」で白鉢巻き組が前へ出てつつこをつかんで持ち上げてはつき落とします。持ち上げるといってもせいぜい腰位までなのですが、つつこは手を話したとたんに自分の重量でずしんと落ちます。それを「わっしょい わっしょい」のかけ声で何度も何度も繰り返します。ちょうど餅付きの杵の動きです。
「黄!かつげ!」で黄色鉢巻きが集まってつつこを担ぎあげて自陣の方へ担ぎあげて運びます。
つつこの重さは約800キロ、引き子は全体で70人位ですからそんなに簡単に動いたり、担いだり出来るものではありません。みんなで替り替り、声を
かけ力を合わせて、各町内の方向へ引いたり、担いだり、しながら町内各所でつつこを充分についていきます。
お祭り本部の前、子供達が叩く太鼓組の前、何軒かの氏子の家の前等では特に「わっしょいわっしょい」激しく突き、引き歓声をあげました。厄年や役員の家の前なのでしょうか?
激しい引き会いの間ずっと、着物を着た役員が、三宝に載った塩を撒き続けます。背中に直接かけられると、汗で塩が溶けて、細かい擦り傷にしみて、結
構ピリピリ来ますよ(^_^) 熱湯をかけて柔らかくしてあるといっても、藁で摺れると体中に細かい擦り傷が出来ているんですね。もちろんお神酒と、水も補給しながら続けます。何度も持ち上げられ突き落とされ、つつこのと太縄はすこしずつ崩れ、藁屑となっていきます。がっちり頑丈に作られたつつこもすこしずつ形が崩れていきます。会場の通りは藁屑が散乱してきました。
1時半くらいから引き合って一時間位経った頃でしょうか。「決めるぞ」との、委員長の声。黄、白の順に下町の決勝点の方向へ、つつこを引いていき、最後に赤が担いで決勝点を超え、今年のつつこ引きは下町(赤組)の勝ちに決まりました。みんなで歓声をあげたあと、つつこを厳島神社の本殿前まで担いで戻ります。
【つつこ開き】
本殿の前に据え付けられたつつこは太い縄が2本程無くなり、本体の藁もかなり抜けて、かなりくたびれた姿になっています。役員が大きな包丁でつつこ
を切り開きます。外側の太縄のあと、藁束、荒縄、藁束、と開いていくうちに、もうもうと湯気が上がってきます。昨日掛けた大量の御湯の熱が藁の保温
力で、高温を保っているのです。最後の麻縄を切り開くと、藁束の中から晒に巻かれた赤飯が登場。引き子は一斉に歓声をあげます。赤飯は何回も突かれる
うちに、ほとんど餅のようになっています。氏子総代が神前に備えるべく両手に抱えて拝殿へあがっていきました。引き子は三本締をして、祭りは終了します。
髪の毛まで藁屑まみれの体を洗って、さっぱりした我々に実行委員会から、神社の御札、つつこの中の赤飯、一合瓶の地酒と御祝儀を頂戴しました。赤飯はまだ暖かくラップに包んであり「御神体」と呼ばれる小豆の香りがする美味しいおもちになっていました。
【帰り途】
帰り途、はっちゃんは長野から来たKさんにさそわれて、岩の湯のすぐ近くのAさんの御宅に御邪魔しました。Aさんのお母さんが毎年遠くから来る引き子衆をねぎらう為に、ビールと手作りの料理を用意して下さっていました。
Aさんのお母さんから昔の祭りの様子を聞きました。
今は3月の第一週の日曜に決まっているので、天候に恵まれるようになったけれども、旧暦の1月25日の祭りの日は2月の上旬に当たる年も多く「つつこ荒れ」という位、突風が吹いたり、雪が降ったりしたそうです。
また、今は委員長の町が、つつこ引きの優勝になることに決まっているけれども、昔はそんな決まりが無かったので、みんな疲れてしまうまで、決着が突
かず、夕方遅くまで延々とやっていたものだそうです。「御神体」も、勝った町が独占するのですから、みんなもっと激しく争い、喧嘩も多かったそうです。
伝統の祭りにかける土地の人の暖かく熱い心に触れ、はっちゃん達の心も暖かくしていただいて、来年の再会を約して、帰路に着きました。
はっちゃん @NIIZA saitama QZM02610
でした。